大阪府立大学吉井泉准教授インタビュー<br> 第一回 「視る力」の大切さ

22 June 2020

大阪府立大学吉井泉准教授インタビュー
第一回 「視る力」の大切さ

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●視覚機能とは●
 
「視る力」ということは、どういうことでしょうか。
みなさんがよく使う「視力」は、正式には静止視力といいます。「視る力」は、それ以外に、眼球を動かす「眼球運動」、動くものを認識する「動体視力」ものの奥行などを把握する「立体視」、瞬間的な認識力「瞬間視力」など多くの機能が相互補完的に機能しています。これらが視機能(あるいは視覚機能)すなわち「視る力」となります。
この視機能の基礎となる能力が視力ですが、年々低下傾向にあります。文科省学校保健調査では、裸眼視力1.0以下の割合は、幼稚園26.1%、小学校34.6%、中学校54.5%、高等学校67.6%(令和元年)と報告されています。これは、勉強や読書だけでなく、ゲームの影響やスマートフォンの普及により、近焦点する環境や時間が多くなることが、その原因と考えられます。今後、さらにスマホやIT機器の使用開始が低年齢化することが予想されますので、真剣に考え、対策をしなければ、視力の低下は一層加速していくことになると思います。視力が悪くなることで、他の視機能に影響を及ぼし、「視る力」が大きく低下することになります。

●眼は脳の一部●
視力はとても重要なものですが、その認識は社会全般で、あまり高いとはいえません。学校の健康診断の結果を受けたご家庭で、眼科(他の歯科、耳鼻科も同様)を受診させないことも多く、「見えていればいい」というような認識なのかもしれません。
また、眼鏡やコンタクトレンズの選び方やその後のケアや定期検診などについては、知識や意識が不十分なように感じます。
眼から得る情報は重要で、日常動作の8割、スポーツでは9割以上が視覚情報に依存しているといわれています。「眼は露出した脳である」と言われています。私たちは相手の表情や細かい仕草をみて、相手の感情や意図などを読みとっていて、「視る力」は動作や行動だけでなく、日常生活の様々な情報を得る重要な役割を担っています。 コロナ禍によって、教育現場ではオンライン授業を余儀なくされていますが、教室全体を見渡すことができず、教師や生徒がお互いの表情が読み取りづらい環境は、ふだんの教室とは全く違うものになっています。
教師にとっては生徒の理解度や集中度を認識すること、生徒たちにとっては、まわりの表情や気配から自分の理解度や疑問点などをはかることができない環境となっています。先生方は努力、工夫しながら授業されていると思いますが、オンライン授業では多くの面で課題を抱えていると感じています。教育の基本はお互いを「視る」ということにあると、改めて痛感することになりました。
このように「視る力」の低下は、私たちの暮らしのいろいろなところに波及するということをもう少し意識してもらえればと思います。

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